

建設マネジメント研究室は、マネジメントだけではなく国際交流も盛んです。このページでは、建設マネジメント研究室における国際交流をご紹介いたします。
・先日行われた、国際建設プロジェクトにおける契約管理のワークショップとそのときの活動、風景をご報告します。
社会マネジメントシステムセンター
第1回 ワークショップ -国際建設プロジェクトの契約管理-
1996年1月のWTO政府調達協定の発効により建設市場の開放はより具体的なものとなった。市場開放は、我が国の建設産業の基本理念の変更を余儀なくされることになる。我が国の建設契約は“信義則”を基盤としており、相互信頼の枠組みで組み立てられているといってよい。これに比べ、国際建設市場で使用されている標準契約約款は相互不信頼の領域をいかに扱うかが基盤となっている。このワークショップは、こういった基本的相違を認識し、国際建設標準契約約款(FDIC)の内容を理解し、国際建設プロジェクトの施工管理技術について学ぶ目的で行なうものである。講師は国内外の建設契約を専門とする人々である。
日時:2004年11月19日〜2004年11月22日
場所:高知工科大学 B101教室(B棟1階)
主催:高知工科大学 社会マネジメントシステムセンター
協力:本州・四国連絡橋公団
参加者:講師他、Patricia D. Galloway女史(前ASCE会長)、
高知工科大学教員・学生 約30名
プログラム
11月19日
13:10 講演1:A New Role of a Civil Engineer “Social Management System” New Public Management Systems and Recent Research Movement
那須清吾(高知工科大学 社会マネジメントシステムセンター長)
14:50 講演2:Development Bank Assistance and Contractual Issues
Robert J. Smith
(Wickwire Gavin, P.C. 米国紛調停協会役員 弁護士・建設技術者)
16:30 講演3:Administration of Construction Contracts
Kris R. Nielsen
(The Nielsen Wurster Group, Inc 会長 弁護士・建設技術者)
11月20日
9:00 講演4:How to Handle Claims?Owner’s Perspective
Kris R. Nielsen
(The Nielsen Wurster Group, Inc 会長 弁護士・建設技術者)
10:40 講演5:How to Handle Claims?Contractor’s Perspective
Kris R. Nielsen
(The Nielsen Wurster Group, Inc 会長 弁護士・建設技術者)
13:10 講演6:The Practical Aspects of Construction Dispute Resolution
Robert J. Smith
(Wickwire Gavin, P.C. 米国紛調停協会役員 弁護士・建設技術者)
14:40 講演7:Contract administration in International Construction Market and Japan
草柳俊二(高知工科大学 社会システム工学科長)
11月21日
10:30 四国地域建設プロジェクト見学(瀬戸大橋)と行政組織との意見交換
北口雅章(本州四国連絡橋公団 第二管理局保全部 計画課長)
11月22日
10:30 四国地域建設プロジェクト見学と行政組織との意見交換
議事録(要約)
プレゼンテーション&ディスカッション
講演 1 高知工科大学教授 那須清吾
コンスタントな経済成長を前提として組み立てられた日本の財政システムは巨額の財政赤字を生み出している。さらに高齢化およびインフラの老朽化が世界一の水準となっている。このような厳しい情勢において社会を維持してゆくために、シビルエンジニアがなすべきことがあるはずだが、問題もある。シビルエンジニアは社会資本投資による効果の評価、特に経済学分野の知識に乏しい。本COEプログラムの目的は工学的観点に基づき、社会システム改革と改善を達成することができるような「社会マネジメントシステム」を構築することである。シビルエンジニアはこのことに対する責任がある。
我々がCOEプログラム研究の一環として取り組んでいる新行政マネジメントシステム構築は、行政のパフォーマンス向上に寄与するものである。ある施策目標に対して組織横断的に検討を行い、経済学的手法を用いてその効果を評価し、最適予算配分を導出する。この試行を小規模自治体において行っている。今後は事例を増やしてゆく。こういった研究を結合させ、ひとつの社会マネジメントシステム理論を構築することが我々の研究のゴールとなる。
我々がCOEプログラム研究の一環として取り組んでいる新行政マネジメントシステム構築は、行政のパフォーマンス向上に寄与するものである。ある施策目標に対して組織横断的に検討を行い、経済学的手法を用いてその効果を評価し、最適予算配分を導出する。この試行を小規模自治体において行っている。今後は事例を増やしてゆく。こういった研究を結合させ、ひとつの社会マネジメントシステム理論を構築することが我々の研究のゴールとなる。
高知工科大学教授 草柳俊二
我々は地方自治体の基礎的なマネジメントシステムのプロトタイプを構築しようと試みている。試行ターゲットは現存する人口4,200人程度の自治体であり、このような規模の自治体は非常に多い。今後他の自治体にも適用できるようなものを構築してゆく。
講演2および6 Wickwire Gavin Mr. Robert J. Smith
世界のインフラ整備において重要な役割を果たす主な開発銀行には、アフリカ開発銀行(AFDB)、アジア開発銀行(ADB)、世界銀行(WB)がある。これら開発銀行から資金援助を得るためには国際競争入札を行うこと、各銀行の標準入札文書を使用することが求められている。これら開発銀行が関与する国際建設事業における契約条項は、FIDIC4(最新はFIDIC5)に準拠したものが現在でも多く使用されている。FIDICによる事業執行形態は三者構造となっている。
国際建設プロジェクトには、数多くのリスクが存在している。こういったリスクを抱える国際建設事業においては、紛争のマネジメントが重要であり、国際建設契約に規定される紛争解決プロセスに精通する必要がある。FIDIC(1999)に規定される紛争解決は紛争裁定委員会(Dispute
Adjudication Board: DAB)において行われる。DABは契約当事者がそれぞれ1名ずつ指名する委員と、彼らが指名する議長からなる3名の中立な専門家より構成される。国際建設事業においてクレーム(請求)通知は28日以内、さらに詳細なクレーム文書提出はその後14日以内に行われる必要がある。エンジニアによる回答はクレーム文書提出以降42日以内となる。この回答に関して当事者間合意が得られない場合はDABへ付託される。付託から84日以内に下されるDABの裁定に対し、28日以内に不服申し立てがない場合は速やかに効力をもつこととなる。DABの裁定に対して合意がない場合は国際商業会議所(International
Chamber of Commerce)の規則による国際仲裁(International Arbitration)によって解決される。世界銀行の紛争解決プロセスもFIDICとよく似たものとなっている。
講演3〜5 The Nielsen Wurster Group Mr.Kris R. Nielsen
契約管理は契約当事者によって契約に含まれているすべての義務が遂行されることを保証するためのプロセスである。建設工事契約において発生する責務には計測可能で物理的に(他者へ)転送可能な“hard
scope of work obligations” とそうでない“soft scope of work obligations” の2通りがある。契約管理担当者は契約書の1ページから最終ページまでを十分理解し、すべてのhardおよびsoftな責務を確認する必要がある。さらに、会社の内部システムが契約上の責務を果たすために適切なものとなっていない場合、その対応策を決定することも求められる。
クレームは、当初の契約条件から変更があったことにより発生したタイムロスや費用の回復の権利について、契約当事者の一方からなされる主張である。発注者は論点および契約形態について把握しなくてはならない。契約管理担当者は他の契約当事者からの提出物の内容を理解し、彼らの達成事項と欠陥事項を調査する能力が求められる。効果的なクレーム処理のために、契約要件は厳密に計測・記録され、関係者に対してタイムリーに報告されなくてはならない。
講演7 高知工科大学教授 草柳俊二
Smith氏に話していただいたように、FIDICにおいては紛争解決のためのDABについての規定があり、これは発注者とコントラクターが直接交渉する場となっている。直接的な交渉は紛争解決に最も効果的であり、法外な報酬が必要となる法律家に依頼するよりも経済的に事が済む。FIDICは紛争調停の明快なシステムを持っている。本ワークショップのような議論は日本ではなかなか見られない。日本の大学の工学部においては特殊な施工法等の知識が蓄積されている。だが、こういった技術だけでは施工専門企業となってしまう。技術者は契約管理、特に文書管理とコミュニケーションについて学ばなくてはならない。
