研究室紹介

研究室の名称


篠森研究室は正式には「視覚・感性統合重点研究室」です。研究室として情報学群に所属しながら, 重点研究室(萌芽研究センター)として総合研究所にも所属しております. そのため, 「高知工科大学 情報学群/総合研究室 視覚・感性統合重点研究室」と記載しております.

英語名称は"Vision and Affective Science Integrated Laboratory(Focused Laboratory), School of Information and Research Institute, Kochi University of Technology"です. 短縮コードでは"VASIL(FL).SI&RI.KUT"と記載しています.


情報学群 篠森研究室(視覚・感性統合重点研究室)

総合研究所 視覚・感覚統合重点研究室


研究について


篠森研究室(視覚・感性統合重点研究室)の専門分野を一言でいうとすれば, 視覚や視覚認知を基盤にした視覚と感性の統合的な研究ということになります. これは心理物理学的手法や非侵襲的脳計測により,人間の視覚と感性応答や情動反応に関する研究を進めるものです.

心理物理学的手法というのは,制御された条件下における視覚刺激の持っている物理量(光の波長分布や光の強さ)と,それに対する視覚的知覚および認識に依存して生じる心理学的応答(例えば,色の見え方や光が見えるかどうかなど),との関連を測定する研究方法です.その際に,刺激の物理的特性を入力とし,情報処理後の人間の応答を物理量で置き換えたものを出力とすることから心理物理学の名が付きました.入力と出力からブラックボックスの中身を推定して,内部の人間情報処理のモデルを作成すると考えてもらうと良いと思います.この方法により,人間の視覚系について解剖や電極を差したりするような破壊的な方法(侵襲的手法といいます)によらず,人間の視覚系について調べることが出来ます.


非侵襲的な脳計測とは,脳に電極を差したりするような侵襲的な方法に対し、脳に損傷や影響を与えずに脳活動を計測する方法で、より具体的には高知工科大学に設置されているfMRI装置で脳の賦活を測定する方法です.



もう少し具体的に研究分野をあげると,視覚研究としては、特に色覚や視覚の時空間特性などの研究に力を入れています.色覚の研究では,2つの色がどのくらい違うと色の違いがわかるという測定実験をさまざまな色や条件で調べることにより,網膜から大脳に至るまでの色の処理過程を明らかにしていきます.また時空間特性の研究では,人間はどのくらいの早さで刺激を処理できるかを調べています。例えばテレビは60Hzで点滅していますが,我々の時間分解能よりもはるかに早いので,我々人間はずっと映像が出続けている様に感じます.それら人間の特性を知ることによって,人間が使うのにちょうど良い視覚情報を作成する指針を得ることが出来ます.

我々は情報学群におりますが,その「情報システム」に含まれるのは,コンピュータだけではありません.人間もまた,外界の情報を生態的センサーで取り込み,情報を処理し,加工し,利用して自らの行動に役立てているという「情報システム」です.視覚の場合は,眼というセンサーで得た光情報を処理して外界の情報を獲得するということになります.しかし,コンピュータなどと異なり,人間の情報処理機構はよく知られてはおりません.これはいやゆる高次と呼ばれる脳の機構がほとんど明らかになっていないこととも関連しています.そのことは単に視覚系だけの研究から, 判断や認知といってより高次機能を含む応答への展開が必要なことを示唆しています。そこで本研究室では初期視覚情報処理から高次の感性や情動の処理にまで一貫して研究を行うことによって、より深く問題に取り組もうとしています.

人間が利用する外界の情報の80%以上は視覚系によるものです.(残りのほとんどは聴覚系を利用する言語情報です)従って視覚系の研究を行うことは,最終的に脳のメカニズムを明らかにするというアプローチの一環になります.また人間の情報処理機構は,コンピュータなどで実現する情報処理アルゴリズムなどの良好なモデルになり得ます.なぜなら最終的に情報を利用するのが人間である場合,人間の情報処理方法と類似した情報処理を計算機で行うと人間により親和的なものになりうるからです.もっとも脳研究自体はまだなかなかそこまで達していませんので,現状はヒューマンインターフェースや照明,CGなど,より直接的な分野に応用されています.また感性計測方法もデザインの向上などの観点から応用が進んでいます.



視覚系といってもその分野は,色,明るさ,立体視,運動視,物体の知覚と認識,錯覚など幅広い分野に別れています.私や研究室の研究としては,脳内におけるさまざまな視覚系情報処理の中から特に色覚に焦点をあてて研究しています.最近の私個人のテーマは次のようなものです.
 1. 人間視覚系における色覚情報処理機構の解明とモデル化
 2. イメージおよび物体の認識における輝度・色情報の寄与と相互作用
 3. 視覚系における加齢の効果の検証
 4. 2色覚の方の色覚情報処理機構の解明とモデル化


さらに感性応答の研究として、次のような研究を進めています.
 5. 色パネルなどのデザインが高い感性評価を受けるための構成条件の検討

 6. 情動を喚起するような視覚刺激(青い木の葉など)による視線停留などの行動や反応の変化

これらの最終的な目標は,網膜上の各種光受容体細胞の光感度から,色覚の各構成要素の脳内励起量を導出するモデル構築を手がかりに,脳内おける情報分離・統合を解明をすることです.そしてそれら知見をさらに拡張して感性や情動といった人間固有の認知処理の解明につなげることです.


最近の研究として、次のような研究を進めています.

 7. 太陽光を含む照明光の色のが変化しても,物体の色はほとんど変化しない色恒常性の機序(メカニズム)の研究
 8. 色を意味語で評価する従来のセマンティック・ディファレンシャル法による印象評価に加えて,意味語を色で評価する印象語の色評価を行うことによって,色と印象の関係性を両方向から計測する双方向性検証を行い,双方向で矛盾なく関係が構築されている意味語と,双方向で関係が大きく異なる意味語とに分離する階層性の検討
特に,8については4とも関連する2色覚の方の応答について長年の疑問を明らかにすることができました.詳しくは研究業績のページをご覧ください.

 

 

最近の視覚や感性研究について(大学HP)


設備


・fMRI
・脳波測定装置
・色弱模擬フィルタ
・視覚刺激呈示装置
・眼球運動測定装置


過去の研究テーマ


研究室配属の学生の研究については,私の専門分野にとらわれず,これらのさまざまな分野での活動を推進しています.

研究テーマについては,本人が希望すれば私から問題提起をする場合もありますが,基本的には,自分で問題を発見して,私と協力しながら問題を解決するという方式で卒業研究を行っています.つまりテーマ自体を学生自身で考えるか,あるいは大きな枠組みのみを提示して,そこから具体的な問題を考えてもらう様にしています.


平成12年度テーマ一覧

学士学位論文

  • 影の重なりや見え方が影による奥行き知覚に与える効果     阿河智紀
  • 同化現象における刺激形状変化のおよぼす影響         中山高明
  • 周辺光による色弁別の影響                  西村有加
  • 異なる判断刺激における刺激応答時間             東野泰幸
  • 異なる空間周波数刺激での輝度インパルス応答         平山正治
  • 前刺激による色順応後の色弁別                深田良尚

 

平成13年度テーマ一覧

学士学位論文

  • 他眼順応刺激による色順応効果                梶原 誠
  • CRTディスプレイの色温度が色に見えに与える影響       清水泰智
  • 異なる空間周波数を持つ色刺激に対するインパルス応答関数   下山孝士
  • ドライビングシミュレーションにおける交差点での判断     久武慎也

 

平成14年度テーマ一覧

修士学位論文

  • 画像再認課題において正確性と高速応答を考慮した刺激呈示方法 東野泰幸

学士学位論文

  • 色・形およびその数が変化する刺激の記憶再認能力       賀来途直
  • CRTディスプレイにおいて異なる錐体順応の条件での色恒常性  谷口沙織
  • 事前注意刺激とそのタイミングが色の再認に与える影響     檜垣陽平

 

平成15年度テーマ一覧

学士学位論文

  • 照度が変化した時の色の記憶比較               池 良平
  • 顔の分類におけるカテゴリーの研究              久原玲二
  • グレーティング順応刺激によるコントラスト抑制効果      津野賢裕

 

平成16年度テーマ一覧

学士学位論文

  • 実刺激とLCD呈示画像間でのマッチング色の変化        竹内 愛
  • 面積効果によるマッチング色の変化              橋本美菜
  • 反射音を伴う交差ー反射知覚実験における移動刺激間色差の影響 松本友一
  • 単純ぼかしパターンによる単眼奥行き知覚に対する呈示方法の影響 米沢祥吾

 

平成17年度テーマ一覧

博士(工学)学位論文

  • 単眼及び両眼での時間足し合わせから予測される空間周波数チャンネルの時間応答に関する研究  平山正治

修士学位論文

  • 顔の分類過程および顔分類に対する倒立効果の影響           久原玲二
  • 刺激格子に対する順行マスキングの空間的時間的有効範囲に関する研究  津野賢裕

学士学位論文

  • 色の面積効果に対する面積分割呈示の影響               柿本裕樹
  • 車載メーター色の変化による速度視認性への影響            島田 謙
  • 数量比較作業における刺激のサイズ,色および形状の影響        原口大二郎
  • 刺激の分光特性変化が色弁別に与える影響               細川敬之

 

平成18年度テーマ一覧

学士学位論文

  • 色の見えにおける眼依存性の検証                   秋山さやか
  • 刺激色記憶における刺激の運動と配置の影響              政岡由衣
  • 刺激の分光特性変化が色のカテゴリ知覚に与える影響          横田遼介

 

平成19年度テーマ一覧

学士学位論文

  • 若年者と高齢者でのカテゴリカルカラーネーミング応答の変化と一致   藤村元気
  • 日常室内環境での床面の色面積効果                  船江 彰
  • 色の面積効果における刺激サイズの効果                渡辺雄大

 

平成20年度テーマ一覧

学士学位論文

  • 色面積効果に対する呈示刺激の形状の違いによる影響          秋川和慶
  • 輝度変調肌色刺激のマッチング色に及ぼす背景色の影響         稲本和也
  • 液晶ディスプレイによる画質評価の設定変化の影響           高須賀英二
  • 数量比較作業における図と地の与える影響               山岡弘治
  • 3次元配置と2次元配置での色対比効果の比較             吉田真規

 

平成21年度テーマ一覧

学士学位論文

  • 色刺激回転速度の変化による色マッチングの刺激・背景への影響     岡林拓美
  • スポット照明下床表面の輝度・色条件が物体の影知覚に与える影響    篠田匠一
  • 刺激格子枠幅の違いによる色同化現象及び色対比効果への影響      安田光輝

 

平成22年度テーマ一覧

修士学位論文

  • 刺激の疑似立体感が背景による輝度・色対比に及ぼす影響        稲本和也
  • 液晶ディスプレイ上での画質評価におけるパネルRGB輝度特性等の影響  高須賀英二

学士学位論文

  • 呈示背景変化による対象物の感性的価値への影響            栗田彩加
  • 作業効果音の遅延による作業への影響の検討              福澤篤志

 

平成23年度テーマ一覧

博士学位論文

  • The Congnitive Mechanism of interaction between Cue Perception and Visual Attention QIAN Qian

 

平成24年度テーマ一覧

学士学位論文

  • 3DCGを用いた外部環境光による色照明下色恒常性への影響の検討    上田紘綺
  • 時間交替型色照明下での色恒常性の検討                田中いづみ
  • 高齢・色弱模擬フィルタ着用下での色恒常性の検討           橋田美緒

 

平成25年度テーマ一覧

学士学位論文

  • 2枚組構成視覚刺激の呈示間隔変化が情報読み取りにもたらす影響    坂本健人
  • 基本色に属さない中間色の色カテゴリー領域の測定           高井 駿

 

平成26年度テーマ一覧

修士学位論文

  • 3次元CG画像刺激上での外部環境の印象変化による異なる色照明下での色認識及び色恒常性に対する影響  上田紘綺
  • 定常色及び時間交代色変化の等輝度照明下での色恒常性に対する高齢・色弱模擬機能性分光フィルタの影響 橋田美緒

学士学位論文

  • 算術式での単一・複数文字使用時の計算速度の測定           梅林勇希
  • 中性色・赤色パネル混合配置刺激の誘目性               中矢竜太

 

平成27年度テーマ一覧

学士学位論文

  • 単一・複数文字色による瞬間的数式呈示における計算の精度・時間の計測 北山彩貴子
  • 自然画像へのCG物体・特殊表現物体配置による注視状態変化        中西 冴
  • ファッションイメージ画の印象評価と色弱模擬フィルタ着用による変化  西村美月

 

平成28年度テーマ一覧

修士学位論文

  • 中性・高彩度色パネル配置刺激における単色・複数色使用と配置による誘目性の変化  中矢竜太

学士学位論文

  • 色の一対比較法による単語と色の印象関連性の検討           小松保奈美

 

平成29年度テーマ一覧

博士学位論文

  • Possible influences of target motion and attention to contribution of retinal adaptation effect
    in color constancy                         万 麗芳(WAN Lifang)

修士学位論文

  • 注視状態と一対比較法による物体運動に対する誘目性の量的測定     中西 冴

学士学位論文

  • 金, 銀, 銅色のグラデーション配色CG物体における金属・光沢知覚と感性評価  井上 匠

 

平成30年度テーマ一覧

修士学位論文

  • 多様な色覚の被験者における単語意味と色印象の関係性の検討      小松 保奈美

 

平成31(令和元)年度テーマ一覧

学士学位論文

  • 飲料広告画像で重視される印象意味語の導出              渡邉 桃汰
  • 真・偽ニュース伝達でのキャスターアバター変化の印象評価への影響   田中 やえみ

国際交流学生の学士学位論文(学位授与大学:中国 吉林大学珠海学院 コンピュータ学院ソフトウエア工学科)

  • Application Research of Image Processing Technology in Improving the Detection and Recognition Effect
    of Traffic Traffic Lights in Natural Scenes.              陳 新宜 CHEN Xinyi
  • Evaluation of Perception Strength of Saturation in Colors       王 明珠 WANG Mingzhu

 

令和2年度テーマ一覧

学士学位論文

  • 様々な外観を持つCG立方体における柔らかさ表現の素材知覚への影響  鍋島 千佳
  • 仮想Webページに対する単語による印象評価における画像変更の影響   森田 吉貴
  • 色彩・形態合成図形に対する活動性・力量性因子でのSD評価における色彩と形態の影響  山崎 謙人

 

令和3年度テーマ一覧

修士学位論文

  • リアル3DCGアバターでの顔パーツ一移動による顔印象の操作  田中 やえみ

 

令和4年度テーマ一覧

修士学位論文

  • WebページへのSD法印象評価におけるレイアウトとコンテンツ入替の影響  森田 吉貴