コンピュータは正確にデータを入力しないと正しく処理してくれません.人間であれば,多少,不確かな情報からでもうまく処理することができます.そこで,人間のような柔軟な処理をコンピュータにもやらせてみようというのがソフトコンピューティングです.「ソフト」とは,柔らかい・柔軟なという意味で,人間のように厳密さだけを追求せず,適当にうまく処理を行う仕組みを実現することを目指す技術・理論です.

ソフトコンピューティングには,ニューラルネットワーク,ファジィ推論,進化計算手法などがあります.より広義的には,カオス理論,ラフ集合,確率推論なども含まれます.当研究室ではこれらの理論を用いて,脳情報デコーディングや画像中の物体の計数・計量,テキスト解析などを行っています.

脳情報デコーディング

脳情報デコーディングとは,脳活動を計測し,パターン認識の手法で見ているものや聞いているものなどの認知内容,感情などの心の内部状態を推定する技術です.人間の脳は部位によって機能が異なり,認知内容や心の内部状態の変化に応じて部位ごとの血流量が変化します.この血流量の変化をfMRIで撮像し,サポートベクターマシンなどの機械学習機で分析することで,脳活動のみから人の認知内容や心の内部状態を推定することが可能になります.

fMRIはfNIRSや脳波と比べて装置が大きく,時間当たりのサンプル数が少ないという短所はありますが,他の脳計測センサでは検知できない脳部位も含めた脳全体の情報を高精度に取得することが可能です.そのため,義手やキーボード入力などをイメージするだけで操作するブレイン・マシン・インターフェース(BMI) / ブレイン・コンピュータ・インタフェース(BCI)や,睡眠中に見ている夢の映像化,検索したいものを想像するだけでキーワード無しで画像検索をするなど,様々な分野への応用が期待されています.

当研究室では,脳情報デコーディングの基礎研究として,脳情報デコーディングに適した機械学習や解析手法の提案,脳情報デコーディングを用いた人の快・不快感情の推定や人が見ている図形の識別の研究が行われてきました.これらの研究は,高知工科大学が有するMRI装置を学生が先生と共に実際に使用しながら行われています.

Other

上記のような分野はもちろん,学生のやる気次第で新しい分野への挑戦も可能な研究室です.

過去には,株に興味があった学生は経済新聞記事のテキストデータ解析による株価予測の研究や,就職活動で苦労した学生はラフ集合やクラスタリングなどの知能技術・データマイニング技術を用いた企業推薦システムの構築,技術雑誌で紹介されていたトポロジカルデータ分析(TDA)という技術に興味を持った学生はTDAの脳情報デコーディングへの適用などを研究テーマとしてきました.

当研究室では,岩田研究室と合同でITnewsというゼミを週に1度行っています.ITnewsでは,技術雑誌や論文誌から興味のある記事を選択し,内容をプレゼン形式で紹介,質疑応答を通して最新技術動向を知ることを目的としています.また,多分野を専門とする研究室と合同であるため,専門分野以外の技術や情報を知るきっかけにもなっています.ITnewsで紹介された・紹介した技術が研究テーマになったり,プレゼン資料作りや発表の練習にもなるため,自身の研究や卒業研究発表などへも活かされています.

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