2007年度 学士論文

金井 宏一郎

音の到着時間差を用いた音源空間推定

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マイクロホンアレイを用いた受音では,指向性の制御や音の到来方向の推定を行うことが可能であり,目的とする音と不要な音を到来方向から分離することで,受音信号のS/N を向上させることができる.しかしながら,受音対象が移動する場合には,常に移動に合わせて指向性の制御をしなければならないといった欠点がある.マイクロホンアレイの指向性制御を自動化するためには,刻々と変化する音源位置の情報が必要となってくる.そこで,本論文ではマイクロホン2 本を用いた音源空間の推定法を提案している.2 本のマイクロホンの受音信号について相関をとり,マイクロホン間の音の到着時間差を求める.音の到着時間差を求めることができれば,2 本のマイクロホンのうち先に音が到着したマイクロホンを特定することが可能となる.提案手法により,音源が複数存在する環境においても推定可能であることを計算機シミュレーションにより確認している.

小林 源太

サブスピーカを用いたクロストークの軽減

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ステレオチャネルで録音された音声をスピーカで聞く場合, 音源から受聴者の両耳までの壁面や床, 受聴者の頭部などによる反射音の影響を無くすことで, 録音時の音場を正しく再現することができる. しかし, スピーカでの楽音再生時には, クロストークと呼ばれる本来聞こえるべきでない音が観測されてしまうという問題が発生する. そして, この問題を解決するための技術として, これまでにいくつかのトランスオーラルシステムと呼ばれる技術が研究されている. しかしトランスオーラルシステムでの音場再生では, 残響時間が長い場合には演算量が増大してしまうことから, 実用化には至っていない.そこで, 本論文では, スピーカを使用した楽音再生時の音場再現精度向上を目的とし, サブスピーカと呼ばれる補正用のスピーカを用いたクロストーク成分の軽減を検証し, 実験によってクロストーク成分が軽減されていることを確認している.

野村 俊介

アクティブノイズコントロールによる自動車エンジン音の軽減法

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我々の身近な乗物として自動車がある.この自動車自身が放出する騒音が環境問題として取り上げられることも少なくない.この騒音を軽減する方法として,音を音で消すアクティブノイズコントロールが注目されている.アクティブノイズコントロールは,フィードフォワード制御による ltered-X LMS アルゴリズムが広く用いられているが,参照信号が急激に変化した場合に制御システムが不安定となる.対策として,適応フィルタの係数更新量を制御するステップサイズパラメータの値をあらかじめ小さく設定することが挙げられるが,適応フィルタの収束速度の劣化が問題となり騒音の軽減効率は悪くなる.本研究ではこの問題点に着目し,参照信号の変化に応じてステップサイズパラメータの再設定を行うシステムの提案を行っている.適応フィルタの収束速度を改善することで,より効率の良い騒音軽減方法を実現している.提案システムでは,参照信号の絶対値を1 サンプルずつ配列に格納を行い,配列の長さ毎に相加平均を算出し,基準値と比較を行うことで,ステップサイズパラメータの再設定を行っている.その結果,配列の長さに応じてステップサイズパラメータの再設定の頻度や制御システムの動作の安定さに違いが現れたことを確認している.提案システムを用いて,自動車エンジン音が軽減できることを計算機シミュレーションにより確認している.

山田 良

ネットワーク上のリソースを活用した実時間音場再生システムの構築

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近年,音響の分野では音に臨場感を与える手法として原音場の再現による音場再生が注目されている.この音場再生は実時間で行うことが望まれており,ディジタル信号処理専用プロセッサを用いることで実現可能となっている.一方,安価に高性能なマイクロプロセッサ導入できることから汎用コンピュータは高性能な処理装置を備えている.本研究ではネットワーク上に存在する複数の信号処理資源を活用することで,分散処理可能な実時間音場再生システムの構築を行っている.従来手法の音の入出力と汎用コンピュータとの違いを検証し,適応信号処理を音の入出力に対応させている.有効性の検証は実験によって行い,提案手法が2 台の高性能な機器による分散処理を行ったとき最も処理性能が向上することが明らかになった.しかし,実験で音場再生の安定は難しく,その原因として遅延量を確認を行ったところ処理負荷が大きいとき遅延量の変化が起きやすくなり同期を取ることが非常に困難となることが明らかになった.また実験環境以外で音場再生を実行したとき考えられる問題点を考察して処理に必要な時間を変化させることによる解決方法を提案している.

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