2012年度 学士論文

隅田 大地

環境音による騒音抑制

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騒音は人体に対してストレスや睡眠妨害などの悪影響を与える.ノイズキャンセラは能動的に騒音を制御する技術であり,騒音と逆位相の音を生成し騒音を消音できる.身近なものとしては自動車のマフラーや工場の排気ダクトに使用されているが,限定的でない空間での実現は困難である.また,耳栓やイヤーマフなどによって騒音を遮断することは可能であるが,耳栓の装着に嫌悪感を抱く人や周囲との会話が必要な場合問題となる.音楽など別の音によってマスキングし騒音を聞こえにくくする方法もあるが,音楽そのものが騒音になる可能性も問題視される.マスキングとは,ある音によって別の音が聞こえにくく,または完全に聞こえなくなる現象の事である.例えば会話中に近くを大きな音で電車が通る時などに会話を続ける事が困難になることがあり,これをマスキングという.本研究では,騒音として認知されづらい環境音をもって騒音のマスキングが可能であるかの検証を目的とする.環境音を日常的に聴取して自然な音として,マスキングに用いる.スペクトルマスキングに着目し騒音の周波数特性と類似した環境音を同時に提示し騒音をマスクする.周波数特性および時間波形の点から騒音がマスクされる事を確認し,被験者実験により評価している.主観評価の結果は,環境音によって騒音がマスクされるが,騒音が聞こえるという評価結果であった.

橋奥 大樹

ロードノイズを対象とした雑音除去モデル

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自動車の走行時,エンジン音やタイヤと路面間の摩擦・衝突によって起こるロードノイズが騒音として車内に伝わり,車内にいる人間に不快感を与える.近年,エンジン音に対するアクティブ騒音制御の普及やエンジン音の比較的静かなハイブリッド車の普及によりエンジン音そのものを感じにくくなるといった背景から,これまで目立たなかったロードノイズが問題となっている.このような自動車の車内に伝わる騒音を制御する方式としてアクティブ騒音制御がある.従来,ロードノイズのような非周期性の騒音に対するアクティブ騒音制御では,LMS 法に基づくMultiple Error Filtered-X LMS アルゴリズムが広く用いられている.しかし,多数のセンサ,制御音源を必要とし,結果として演算量が高くなり,騒音の変化に対する追従性が低いという問題が指摘されている.また,入力信号が複数あるため,参照信号間で相関が発生することにより,収束速度が劣化してしまう.そこで本研究では,ロードノイズを対象とし,雑音除去モデルの提案を行う.従来多く用いられていた2 入力4 点制御型に対して,処理を前席部分と後席部分に分け,1 入力2 点制御型を2 つ用いての制御を行うことで演算量の低減を図る.また,処理を2 つに分散したことにより,従来の参照信号間の相関による収束速度の劣化を抑えることができる.演算量の比較を行うことにより,提案モデルが従来の多入力多点制御を用いたモデルよりも演算量が大幅に軽減されたことを確認している.提案したモデルを用いて,ロードノイズを軽減できることを計算機シミュレーションを通して確認している.

プロジェクト研究

岩田 貴江

SD法を用いたノイズの印象評価

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ノイズ除去フィルタはフィルタをかける前の音やフィルタをかけた結果をS/N 比等の数値的な工学の面から評価を行っているものは多いが,人間が実際に聴いた時どのように感じるかを感性工学の面から考えたものは少ない.しかし数値的な面からいくらノイズが除去できていても,実際に聞いた際に音自体は小さくてもノイズが不快でと感じられるケースがあることは想定できる,実際に感性工学の面から聴覚特性を踏まえた上で調査が行えるならば,より高水準での評価ができる. 本研究では,SD 法を用いたアンケートを行うことで元信号にノイズが乗った際にどの様に感じられるかを調査し,その調査結果が人間の聴覚特性を考慮できているかを調査し,どの音域のノイズがどれだけの影響を元信号に及ぼすのかを調べ,その影響力を表す度合いを,ノイズがどれだけ不快であるか.もしくはどれだけ原音の再現を阻害しているかの感性を数値化することで,実際に元信号に乗ったノイズについてノイズ除去の優先順位を調査し,その結果が人間の聴覚特性の観点から見た予測に沿ってあるならば,人間の聴覚特性を考慮できたとし,SD 法を用いた評価が人間の聴覚特性を考慮できることを確認した.

学士論文

プロジェクト研究