2016年度 修士論文
医療機関は広域災害に備えて電子カルテを含む医療データを遠隔地にバックアップしている.災害時,DMAT(Disaster Medical Assistance Team)にバックアップした医療データを提供できれば,被災地での医療行為を円滑に行うことができる.医療データは個人情報であるため,患者の診療に不必要な情報の提供を制限しなければならない.そこで秘密分散したデータを部分的に復元するアルゴリズムを提案した.部分復元に必要なデータが第三者に洩れると不正復元される可能性がある.本研究では,部分復元に必要なデータの入手を制限した部分復元可能な秘密分散システムを提案し,提案システムで不正復元される問題点を整理し,不正復元を防ぐ要件を定義する.
2016年度 学士論文
災害発生時,自治体に予め定められた病院の外には被災者の一時避難や応急手当等を目的とした災害救護拠点が開設される.ここでは被災者の安否確認や災害救護医療拠点の状況把握のために,被災者名簿が作成される.被災者への迅速な対応のために,被災者名簿の作成時の手間を減らすためのシステムが検討されている.このシステムは現状災害時にのみ稼働するシステムであり,災害時に慣れないシステムを使う事は困難である.本研究では,平時にこのシステムを用いて名簿作成訓練を行うための被災者対応訓練シミュレータを提案する.
災害時に一時避難や応急手当を目的として災害救護拠点が開設される.災害救護拠点には要配慮者を含む被災者が多く集まることが予想される.要配慮者とは高齢者など災害時に避難支援が必要な人のことである.要配慮者の情報は名簿として自治体で管理されている.また,災害救護拠点では,今後の災害対策や安否確認のため被災者名簿の作成が義務づけられている.災害救護拠点での名簿作成の負荷を軽減するために被災者名簿作成システムの研究が行われた.災害救護拠点において被災者名簿作成システムから要配慮者名簿を活用することで要配慮者への柔軟な対応を行うことができる.しかし,災害救護拠点では多くの人が活動しており,すべての人が個人情報である要配慮者名簿を閲覧することは望ましくない.本研究では,自治体で管理されている要配慮者名簿を災害救護拠点で活用するためにデータベース化し,閲覧可能な人を制限するためにアクセス制御を行う.また,データベースを運用する上ですべての権限を持つ管理者アカウントの不正利用のリスクを軽減するためにアカウント管理者と要配慮者名簿データベース管理者に権限を分けてデータベースの運用を行う.
2016年度プロジェクト研究
自動車走行中にタイヤが原因で発生する騒音はタイヤノイズと呼ばれており,代表的なものにパターンノイズが存在する.パターンノイズはタイヤの縦溝である部分が路面と接地する際,溝に入った空気が圧縮・放出されることによって発生するノイズである.このパターンノイズの発生には気柱共鳴が関わっており,周波数は接地した縦溝の部分の長さと音速で求められるため,共振周波数はほぼ一定であり,800Hzから1000Hzに存在している.タイヤノイズは車内と車外で聞こえる音の2パターンあり,特に車外で聞こえる音は騒音として問題視されている.EUでは既に騒音防止のためタイヤノイズの大きさに規制がなされており,日本でもタイヤノイズの大きさに規制がかかる予定である.タイヤノイズを抑える方法としては,タイヤの溝のパターンを変えるといった方法がある.しかしタイヤの溝パターンを変えてしまうと,スリップなどが起きやすくなるため安易に変えることは出来ない.そこで適応フィルタを用いたノイズキャンセラを運用することで,走行中のタイヤノイズに対してノイズの音を低減することが可能になる.本研究では周波数帯域が明確になっているパターンノイズに着目し,パターンノイズに対してノイズキャンセラの構成を行う.