2011年度 学士論文
雑音を除去する方法として適応フィルタを用いたノイズキャンセラがある.しかしスパース特性を持つ空間では,一般的に使用される学習同定法ではノイズキャンセラの性能が低下してしまうことが知られている.そこで本研究では,音響特性のスパース性という特徴に着目し,スパース性を考慮した適応アルゴリズムを用いることでノイズキャンセラの性能の向上を図る.提案システムでは結合係数比例型学習同定法というスパース性を考慮した適応アルゴリズムの中でも,事前の情報が不要である適応アルゴリズムを用いる.提案したシステムの計算機シュミレーションを行うことで従来の学習同定法と比べて雑音が十分に消去されていることを確認している
録音機器は入力できる最大の信号があらかじめ決まっており,音声を録音する際に入力された電気信号が録音機器の最大入力を超えた場合はクリップという現象が起こる.クリップした信号が連続する場合,クリッピングノイズと呼ばれる音割れや雑音が聴こえるため,クリッピングノイズを軽減する必要がある.しかし,クリップ部分の波形は切り取られてしまい記録されないため,波形を完全に元の形に戻すことはできない.再録音ができない音声だった場合,クリッピングノイズが発生したままの音声となる.コンプレッサやリミッタを使うことでクリップの発生を予防できる.しかし,突然の過大な信号入力には対応できないため,クリッピングノイズを軽減する必要がある.クリッピングノイズを軽減する手段として近似補間を用いた方法が挙げられる.しかし,クリップした部分の傾きが急な場合は補間した波形が原音と大きく異なり,原音を再現できないという欠点がある.本研究では,補正によるクリッピングノイズの軽減を目的とする.手法として,近似補間ではなく最小2 乗法を用いた補正を行い,クリップ部分と前後の波形を差し替えることにより,クリッピングノイズを軽減させる.処理を行うことでクリップした部分が無くなることを確認し,処理した音声を被験者実験により評価している.また,補間法の一つであるニュートン補間法で補間を行った結果と比較を行い,それぞれの結果の違いを確認している.