2014年度 修士論文
仮想サーバ配置問題とは,統合先サーバに収容される仮想サーバの各計算資源使用量の合 計値が閾値を超えないという制約の下で,必要とする統合先サーバ台数が最小となるサーバ の組合せを求める問題である.配置された仮想サーバの資源の必要量が統合先サーバの備え る資源容量を超えると,重大な性能劣化を引き起こすことになる. 現実の問題では,計算資源の数は4~6,統合対象の仮想サーバ数は数百から千台前後と なり,エンジニアによる現場での提案書の作成や複数回実行することを考えると計算時間は 数分以内である必要がある. 仮想サーバ配置問題を定式化したN 次元パッキング問題はNP 困難な問題に分類されて おり,アイテム数の多い問題となると現実的な時間内に厳密解を得られない.そのため,数 分以内という短時間で解を必要とする場合,短時間で解を算出できるヒューリスティックな アルゴリズムにより近似解を求める必要がある. 本研究では,より適したアルゴリズムを検討するため,仮想サーバ配置問題にヒューリス ティックなアルゴリズムを適用し,改良したランダムサンプリング,遺伝的アルゴリズム, ランダム探索,改良FFD の4 つのアルゴリズムで比較・検証を行った. その結果,改良型ランダムサンプリングを適用することで出力される解に大きく差はない が他のアルゴリズムと比べて良い平均値を示す可能性があることが分かった.
2014年度 学士論文
訪問看護の現場において呼吸音の聴診は重要な診察方法の一つである. 呼吸音の異常が発 見された場合, 重大な病気である可能性が高く, 直ちに治療する必要がある. 看護師は患者に 対して診断を行うことができないため, 録音した呼吸音を病院へ送信し, 診断を行う取り組み が考えられている. しかし, 病院の医者は送られてきた大量の聴診データを診断しきれない といった問題が生じている. このような問題は呼吸音から異常呼吸音の有無を簡易検出でき るシステムがあれば解決できる. そこで本研究では, パターン認識アルゴリズムの一つであるサポートベクターマシンを用 い, 異常呼吸音の自動判別を行うシステムを提案している. 提案方法ではウェーブレット変 換によって得られたデータを使用することを前提としている. ウェーブレット変換によって 得られたデータを特徴として用いた, 正常呼吸音と異常呼吸音のクラスラベル付き学習デー タを基に学習データベースを構築している. 構築した学習データベースを用いてサポートベ クターマシンにより, 正常呼吸音と異常呼吸音の分類基準を定めている. 作成したサポート ベクターマシン分類器によって呼吸音を分類することにより, 呼吸音の自動判別を行ってい る. また, 実際に訪問看護の現場で録音された呼吸音による異常呼吸音の判別を行った結果, 判別は可能であることを確認している.
秘密分散法を用いて個人情報が含まれる医療データを分散バックアップするという取り組 みがある.平常時は医療機関ごとに医療データのバックアップを行い,災害時にバックアッ プデータを活用しようとするものである.医療データには個人情報が含まれているため,災 害時派遣された医療従事者が診察に不必要なデータを閲覧することは問題である.バック アップデータから患者の診察に必要なデータのみを閲覧することができれば,外部から派遣 された医師は患者に対して適切な処置を行うことができる.しかし,秘密分散法はデータを 部分的に秘匿したまま復元することはできない. そこで本研究では,(k, n) しきい値秘密分散法を用いてデータを部分的に秘匿したまま復 元する方法を提案し,提案方法の評価を行っている.データを分割してからシェアを作成 し,シェアを結合する際に秘匿部分にマスクをかけることで,データを部分的に秘匿してい る.しかし,何らかの方法でシェアを入手することができれば,データを不正に復元される 恐れがあるため,不正復元を防ぐアクセス制限方法を示している.アクセス制限により,管 理者の意図しないユーザがデータを復元することを防ぐことができる.
遠隔会議において,受話者側のスピーカから拡声された音声をマイクロホンが収音し,送 話者のスピーカで拡声される音響エコーは,会話の妨げとなる.そのため,遠隔会議では 音響エコーキャンセラが用いられる.会議ではパソコンの操作音や資料をめくる音など,卓 上で非定常雑音が生じることが想定される.音声と同時に雑音が収音されることにより,エコー抑圧処理性能が劣化する.そのため,遠隔会議で用いられる音響エコーキャンセラは雑 音抑圧処理の併用が必要となる場合がある. 一般的な雑音抑圧処理技術として,単一マイクロホンを用いた雑音抑圧処理技術が挙げら れる.雑音の定常性を利用し,雑音と音声が混ざった入力信号のスペクトルから,雑音信号 のスペクトルを引くことにより,雑音の抑圧が可能となる.雑音の定常性を利用しているこ とから,遠隔会議で生じる非定常雑音の抑圧ができない. 本研究では,垂直に並べた2つのマイクロホンを用いた雑音抑圧処理を行っている.人の 発話と卓上で生じる非定常雑音の音源位置の違いから,雑音のみの抑圧が可能であるかの検 証を目的としている.雑音抑圧手法は,各マイクロホンに雑音が到達する時間差を推定し, 信号の減算処理により雑音を抑圧している.垂直に並べた2つのマイクロホンを用いた雑音 抑圧実験によって,反射音が発生しない場合では,非定常雑音および定常雑音の抑圧ができ ていることを確認している.また,人の発話に雑音が混入した場合でも,雑音のみ抑圧がで きていることを確認している.しかし,反射音が発生した場合は雑音抑圧処理の効果がみら れなかった.
訪問看護において, 呼吸音の聴診は重要な診察方法の一つである. 呼吸異常音が発見され た場合, 重大な病気である可能性が高く, 直ちに治療する必要がある. そのため, 訪問看護の 現場で録音した聴診音を病院に伝送することで, 医師がすぐに診断する取り組みが行われて いる. しかし, 聴診音が大量に集まることや, 録音された聴診音が小さいことが呼吸異常音の 早期発見を難しくしている. この問題は, リアルタイムで呼吸異常音を自動検出するシステ ムがあれば解決できる. 本研究では, パターン認識による呼吸異常音の自動検出システムに用いる呼吸音の特徴と して, ウェーブレット変換による呼吸異常音の特徴抽出方法を提案する. 呼吸音にウェーブ レット変換を適用し, 得られたウェーブレット係数より特徴量を抽出している. さらに, 抽出 した特徴量が呼吸異常音の特徴として有効であるかを確認するため, 抽出した特徴量を用い て聴診音の中から呼吸異常音の発生箇所を検出する. 聴診音より呼吸異常音の発生箇所を検 出することができたため, 抽出した特徴量は呼吸異常音の特徴として有効であることを確認 している.
プロジェクト研究
近年、補聴器の性能向上のため非常に手頃で扱いやすくなっている。しかし、難聴者の方 でも補聴器を使わない人が多くいる。その理由として、聞きたい音が聞き取れない、どこか ら音がしているか判断ができないというものがある。これを改善するためには、聞き取りた い音の方向の補聴器から出力される音だけを大きくする必要がある。そのためには音源方向 の特定をする必要がある。一つの補聴器で聞き取りたい音の方向を推定するには推定範囲 が限定されており、左右方向に対しての音の増幅が困難である。二つの補聴器を用いること で音源方向の推定できる範囲が広くなり、左右方向に対しての音の増幅も可能になる。しか し、左右の補聴器で到達時間差の推定を行う際には、マイク間に頭部が存在するため、到達 時間差に影響を与えると考えられる。 本研究では、実際に両耳に補聴器を着用した状況を想定し、2 本のマイクを用いて頭部の 特性について検証をおこなっている。マイク間に遮蔽物を置かない場合、マイク間に頭部が 存在する場合、ダミーヘッドを用いた場合の3 つの方法で録音したデータを使用し、相互相 関関数を用いて2 本のマイクに入力される音声信号のから到達時間差を計測している。ま た、到達時間差から音源方向の位置推定を行い、実際の音源位置と比較を行っている。その 結果、頭部を迂回して届く音が到達時間差に影響を与えることから音源方向の推定に、ずれ が生じたことを確認している。