2004年度 修士論文

浜崎 真二

クロストーク成分の相互相関に着目した音場再生システム

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トランスオーラルシステムに代表されるラウドスピーカ再生による音場再生システムは,受聴者にヘッドホン等を装着させることなく音を提示することができる.しかし受聴点(制御点)において音圧を所望信号に近似させるためにはラウドスピーカ(2 次音源)から制御点までの伝達特性の影響を考慮する必要がある.このことは空間伝達特性の逆特性を適応フィルタにより推定し,所望信号に畳み込むことで解決される.現在までに逆特性を近似する手法についてはシステム論的立場から様々な検討がなされてきた.その中で最も有効とされている手法にMINT 理論に基づいた多チャネル-多点制御系がある.これは制御点数Mに対し2 次音源数をM + 1 用意することで,逆特性の推定と同時にクロストーク現象を除去し,音の再現を可能にしている.しかし余分なスピーカを用いることで制御系が複雑になり,残響時間が長い場合には演算量を増加させてしまうことが懸念され実用化に至っていない.そこで本論文では制御点数2 に対し2 次音源数2 で構成される新たな制御系を提案している.通常,2 チャネル-2 点制御系では厳密に伝達特性の逆特性を近似させることは,システム論的見解からは困難とされているが,クロストーク成分に強い相関があるという事実を利用すると,クロストークの影響は軽減可能であり,その結果,原音に対する再現音の再現精度が向上することを計算機シミュレーションにより確認している.

2004年度 学士論文

稲垣 幸弘

濃度差分の統計的性質に基づいた特定色情報の補間法

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画像は種々の要因により劣化や欠損が生じる。これまでに欠損画像に対する代表的な補間法は確立しておらず、一般的に欠損箇所の周囲の濃度値から予測することで復元を行う。しかし周囲の情報のみでは,補間に使用できる情報量の少なさから正確な復元は困難であり,復元精度を向上させるためには何らかの情報量を増加させる必要がある.カラー表示方式のひとつであるRGB の各チャネルの濃度値は類似していることが知られているため,1 チャネルの濃度値から他チャネルの濃度値を予測することができると考えられる.本論文ではフルカラー画像におけるRGB 各チャネル間の濃度差分の相関係数を用い,回帰直線から予測値を算出することで局所的に連続して欠損した画像を補間する手法を提案している。本提案手法による補間を行った結果,比較的難しいエッジ部の補間においても輪郭をうまく復元できることを確認している.

久保 忠之

高速信号処理に適した適応アルゴリズム

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適応信号処理を実時間上で行うことは演算量が多くなることにより困難である.そのため,先行研究においてフィルタ係数の更新頻度を減少させることにより演算回数を減らす手法が提案されている.しかしながらその手法ではパラメータ推定の収束速度が遅くなる問題がある.これはフィルタ係数を更新していない間は入力信号の情報が用いられないため入力信号の情報欠落が起こるためである.本論文では,収束速度の低下を抑えるためにフィルタ係数の更新を行っていない状態でも分散の推定を行うことにより,入力信号の全ての情報を用いるアルゴリズムを提案し,パラメータ推定速度の低下を抑えられることを検証している.

竹内 翔

誤差の影響を受けた共役勾配法の反復回数の最適化

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連立1 次方程式を反復法を用いて解く場合,入力信号が誤差の影響を受けていると,算出される近似解の真値との残差が増大してしまい,結果として解を正しく得られない問題が起こる.そのため,誤差の影響を受けた信号であっても残差の増大を抑える方法の確立が必要である.本論文では,反復法の1 つである共役勾配法の,入力信号が誤差の影響を受けた場合での残差の増大を修正ノルムの値による反復打ち切りと最低反復回数の設定により行い,緩和することが可能であることを示している.

谷本 真紀

実時間実行時の適応等化器の評価

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適応等化器を実時間実行させるためには演算量の削減が必要である.過去の研究において,パラメータの更新頻度を調節することにより実時間実行性を確保することが提案されている.しかし,適応等化器の調整パラメータと更新頻度との関係については検証が行われておらずパラメータの収束特性については未検討である.本論文では,実時間実行を可能にする適応等化器を雑音の環境下で用いた場合の収束性についてステップゲインと更新頻度の関係を計算機シミュレーションにより検証し,適応等化器の性能評価を行い様々な場合において提案されたアルゴリズムの有効性の検討を行っている.適応等化器のパラメータを変化させた結果,推定精度に大きく変化が起きていることは確認できるが,パラメータの決定までには至っていない.

富永 雅行

他入力信号補正における収束特性の評価法

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原音場の特性を再生音場にて忠実に再現する手法として、多チャネル-多点制御系は有効である。しかしながら、再生空間の残響時間が長い環境では制御系が複雑になり、その結果演算量が膨大になるため実用化にいたっていない。このことに対し、浜崎らは空間伝達特性の影響を軽減させる2チャネル-2点制御系(多入力信号補正システム)を提案してきたが、伝達特性の近似逆特性の収束性については保証されていない。そこで、本論文では様々な実環境を想定し、それぞれの環境における伝達関数の実測値を用いて計算機シミュレーションを行い、重み付けパラメータやクロストークの相互相関係数を用いて収束特性の検証を行う。その結果から相互相関係数が高いほどシステムの精度がよくなることを確認している。また、重み付けパラメータの設定には所望信号のパワー比に関係あることも確認している。このことから、クロストーク成分の相互相関係数が高い程原音に対する再現音の再現精度が向上することを計算機シミュレーションにより確認している。

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